記帳代行の費用と依頼できる範囲は?税理士との違いも整理
この記事の要点
- 記帳代行は仕訳入力や領収書整理を委託でき税務申告は依頼できない
- 費用相場は月100件でおよそ月額15,000円から30,000円程度
- 口座や会計ソフトは閲覧や入力のみの権限を付与して安全に共有する
記帳代行とは、日々の領収書整理や会計ソフトへの取引入力を外部へ委託できる実務サービスです。帳簿付けの工数を手放して本業に集中したい社長や個人事業主にとって、経理業務を効率化する有力な選択肢になります。
事業を運営していると、領収書の束や請求書の確認作業が月末に集中し、売上をつくる活動が後回しになりがちです。この記事では、記帳代行に委託できる具体的な仕事の単位や費用感、税理士法との境界線、安全に運用するための引き継ぎ手順を整理してお伝えします。
記帳代行で依頼できる作業と税理士との違い
記帳代行へ任せられる具体的な仕事
記帳代行で依頼できる作業は、基本的に「過去の取引事実を帳簿へ正しく記録すること」です。領収書や請求書、通帳のコピーをもとに、指定の会計ソフトへ仕訳データを打ち込む作業が中心になります。
オンライン秘書や事務代行へ任せる場合、以下のような仕事の単位で切り出す運用が一般的です。
- 領収書やレシートの画像確認と日付・金額・支払先のデータ化
- クラウド会計ソフトへの銀行口座・クレジットカード明細の同期確認と仕訳登録
- 発行済み請求書と入金データの照合作業
- 支払予定リストの作成と請求書データの整理保管
仕訳のルールや勘定科目が決まっていれば、毎月のルーティン作業としてスムーズに外部へ引き継げます。
税理士法で定められた業務との境界線
記帳代行を利用する際に必ず把握しておきたいのが、税理士資格を持たない事業者が代行できる業務の範囲です。税理士法において、税務相談・税務書類の作成・税務代理の3つは税理士の独占業務と定められています。
そのため、無資格の代行事業者に対して「決算書の確定作業をしてほしい」「今期の節税策を提案してほしい」「税務署への申告書を代理提出してほしい」といった依頼はできません。これらは違法行為に該当する恐れがあるためです。
税務上の判断や確定申告書の作成は顧問税理士へ依頼し、日々のデータ入力や書類整理は記帳代行やオンライン秘書へ任せるという役割分担が基本です。制度の詳細や最新の法規定については、国税庁の公式案内を確認してください。
記帳代行の費用相場はどのくらいかかる?
仕訳数に応じた従量課金と月額定額制
記帳代行の費用体系は、1仕訳ごとに料金が発生する「従量課金制」と、月間の仕訳数上限を決めて定額を支払う「月額制」の2種類が主流です。
従量課金の場合、1仕訳あたりおよそ50円から150円程度が相場とされています。ただし、領収書が紙のままで丸投げする場合は追加料金が発生するなど、依頼する状態によって金額に幅があります。
月額定額制の場合、月間100仕訳までの小規模事業者向けプランであれば、月額15,000円から30,000円程度で請け負う事業者が多く見られます。仕訳数が300件から500件を超える規模になると、月額50,000円から100,000円前後の費用が発生することもあります。
オンライン秘書にまとめて依頼する場合の費用感
記帳だけでなく、日程調整やメール対応、資料作成なども合わせて依頼したい場合は、時間契約のオンライン秘書サービスを利用する方法があります。
月間20時間の稼働枠を契約し、そのうち8時間を記帳入力、残りの時間をスケジュール管理や問い合わせ対応に充てるといった柔軟な配分が可能です。この場合の月額費用は、およそ50,000円から100,000円程度が一般的な基準となります。
専任の経理担当者を正社員やパートで雇用する場合と比較して、採用コストや社会保険料の負担を抑えやすい利点があります。なお、雇用と業務委託の区分や契約上の留意点については、厚生労働省のガイドラインを参照し、適切な契約形態を選択してください。

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手順1:現状の仕訳件数と経理フローの把握
最初に、毎月どのくらいの領収書や請求書が発生しているかを数えます。年間の取引推移を確認し、繁忙期にどの程度まで仕訳件数が増えるかを把握します。
また、現在は現金支払いがどのくらいあり、クレジットカードや銀行振込がどの程度使われているかをリスト化します。支払い手段をキャッシュレスに寄せるだけでも、代行側の入力工数を減らし、外注費用の抑制につながります。
手順2:依頼範囲と勘定科目ルールの整理
次に、どこまでを代行先に渡し、どこからを自社または税理士が担当するかを切り分けます。
例えば、「消耗品費と会議費の仕訳は代行スタッフが入力し、判断に迷う支出は未確定ボックスに入れて税理士へ確認する」といった運用基準を設けます。過去1年分の仕訳帳をサンプルとして渡し、よく使う勘定科目の一覧を用意すると引き継ぎが円滑になります。
手順3:クラウドツールと権限の設定
スムーズなデータ連携のために、クラウド会計ソフトのアカウントを用意します。
代行スタッフには管理者権限ではなく、入力のみが可能な「記帳担当者権限」や「オペレーター権限」を付与します。インターネットバンキングについても、振込実行権限を持たせない閲覧専用アカウントを発行するか、API連携機能を用いて直接ログインさせない仕組みを整えます。
手順4:月次の締め日と確認サイクルの取り決め
実務を回し始める前に、月間のスケジュールを確定させます。
- 毎月5日までに領収書画像や請求書データを指定フォルダへ共有する
- 毎月15日までに代行スタッフが一次入力を完了させる
- 毎月20日までに事業主または顧問税理士が内容を確認し確定させる
締切日を明確に取り決めておくことで、月次決算の遅延を防ぎ、常に最新の経営数字を把握できる体制が整います。
記帳代行でよくある失敗例と安全運用のポイント
判断基準があいまいで差し戻しが頻発するケース
記帳代行で業務が滞る典型的な失敗は、勘定科目の判断基準をスタッフへ渡していないケースです。
「カフェでの支払いが会議費なのか福利厚生費なのか」「10万円以上のパソコン購入を消耗品費で処理してよいのか」といった判断を代行スタッフへ委ねてしまうと、処理の手が止まり、質問のやり取りだけで多くの時間を消費してしまいます。
対策として、迷いやすい支出の処理手順をまとめた簡易マニュアルを作成しておくことが重要です。判断がつかない項目は保留用の勘定科目で一時登録してもらい、月末にまとめて事業主が確認するルールを敷くと作業が止まりません。
アカウント管理の不備によるセキュリティ事故のリスク
金融機関のログインIDやパスワードをテキストファイルでそのままチャットツールへ貼り付けて渡すような運用は、重大な情報漏洩リスクを招きます。
安全に情報を預けるためには、以下の対策を徹底してください。
- パスワード管理ツールを使用し、文字列を直接開示せずにログイン権限を共有する
- 業務連絡を行うチャットツールには二段階認証を設定する
- 契約終了時には共有していたアカウントのアクセス権限を速やかに削除する
情報管理を徹底し、最小限の権限のみを渡す仕組みを構築することが、トラブルを防ぐ要となります。
自社に合った記帳代行の選び方
記帳代行を選ぶ際は、自社が使っている会計ソフトに対応しているかを最初に確認します。主要なクラウド会計ソフトに対応している事業者であれば、データのやり取りが迅速に行えます。
また、領収書の提出方法が原本郵送なのか、スマートフォンでの撮影送信で済むのかも確認項目の一つです。原本郵送の場合は送料やファイリングの手間が発生するため、自社の運用に負担がない形式を選ぶ必要があります。
経理入力だけでなく、請求書の発行代行や売掛金の消込作業など、周辺のバックオフィス業務もまとめて巻き取ってほしい場合は、柔軟な業務設計に対応できるオンライン秘書サービスの活用を検討するとよいでしょう。自社の現在の手間と予算のバランスを見極め、適切な委託先を選択してください。
よくある質問
- Q. 記帳代行を税理士ではなくオンライン秘書に頼むメリットは何ですか?
- A. オンライン秘書は記帳入力だけでなく、請求書作成やメール対応、日程調整など周辺のバックオフィス業務をまとめて1つの窓口へ委託できる柔軟性がメリットです。
- Q. 領収書の原本は必ず郵送で送る必要がありますか?
- A. スマートフォンのスキャンアプリや写真共有で作業を進められる事業者が増えています。ただし、電子帳簿保存法に対応した保存要件を満たす必要があるため運用ルールの確認が必要です。
- Q. 個人事業主でも記帳代行を利用することはできますか?
- A. はい、利用可能です。仕訳数が少ない方向けの従量課金プランや低価格な月額プランを用意している事業者が多く、本業に集中したい個人事業主に広く利用されています。
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